不器用に結ばれたリボン(クリスマス企画)


最悪だ

クリスマスなのに祐希と喧嘩した

大晦日の時といい、なんで俺たちはこういう大切な時に喧嘩するんだろう


発端はこのクリスマスの話題だった

去年のクリスマス
その頃には俺たちはもう付き合っていた

だから俺はクリスマスプレゼントを用意してたんだ

何選んで良いか分からなかったから無難にマグカップにしといた



『え…いいの悠太、これ』
『うん。祐希に買ってきたんだもん』
『…悠太もしかしてこれおそろい?』
『!』
『……かわいー、悠太。俺たち双子だからこういうペアカップ改めて買うことないもんね』
『…うるさいなあ』
『ありがとう』
『……うん』
『でもごめん…俺なんも用意してない』
『いいよ別に。元から期待してないし』
『えー………じゃあ来年!来年のクリスマス絶対あげる!』
『え…』
『悠太が一番喜ぶ素敵なプレゼント、来年用意するよ。だから…楽しみにしてて?』
『…祐希…』



それが去年の約束

物なんて別になんでもいい

ただ祐希が俺のために何かを選んでくれる
それだけで嬉しかった

実際祐希は11月からバイトを始めてたし、当日の今日も三時間くらい出かけていた

だからそれなりにワクワクしてたんだ


なのに…



『忘れた』
『……は?』
『ごめん、忘れちゃった』
『え…忘れたって…去年した、約束…?』
『うん、ごめん』
『……じゃあ…バイトは?なんで始めたの』
『お金なかったからだよ』
『………』
『…ごめん』
『じゃあなんでクリスマスに出かけてたの?』
『…新刊買いに行ってた』
『……もういい、祐希のそういういいかげんな所、俺は嫌いだよ』
『…忘れてたんだからしょうがないじゃん』
『俺は去年の祐希の言葉が嬉しかったのに…』
『じゃあ何?今年の俺はだめってこと?』
『そんなこと言ってないじゃん』
『言ってる』
『だってクリスマスに新刊って…ならせめて傍にいてほしかった。バイトもマンガのためってことでしょ?』
『……』
『…まあ祐希だもんね。いいじゃん、勝手にクリスマス過ごせば』
『…そうさせてもらいます』




そう言って珍しく俺が家を出ていった


こだわりすぎなのかもしれない


でも別に忘れてたからこんな怒ってるんじゃない

忘れてたのもそりゃムカついたけどそれ以上に

こんな大切な時に俺よりマンガを優先した祐希が…無性に悲しかったんだ


クリスマスの町はキラキラしてた

みんな恋人と並んで歩いて、この寒さを凌ごうとしてる


俺はこんな寒さの中、1人で4時間

何やってんだろ


正直室内入りたいけどよっぽど気持ちが落ち着いてなかったせいか財布を忘れてた

ていうか携帯すら持ってない

友達の家に行くのもアリだけどさすがにクリスマスは良くないだろう


「…心も寒いんですが」

最悪だよ本当…

なんでクリスマスなのにこんな気持ち…


「浅羽くん?」
「え…はい」

ぼーっと町を歩いていると知らない男性に話しかけられた

名前を知ってるくらいだから話したことあるんだろうけど…全然見覚えがない

エプロンからするに、どうやら目の前の花屋さんのようだ


「なんだお前ーこれから彼女のとこか?」
「あ、いえ…ていうか、」
「それとももう渡してきたのか!?今日彼女にプレゼント用意してたもんなぁー!」

……

「は…?」
「お前意外とロマンチストだよな!彼女も喜ぶだろうよ!こんなイケメンから〜」
「え、と…」


彼女…?

今日出かけてたから、この話は多分俺じゃなくて祐希の話だ


あの時『忘れた』って言ったプレゼントを用意してた…?

それって…俺との約束を忘れたよりマンガより

実は俺の知らない内に彼女がいたってこと…?


「……まあ…そんなとこです。失礼します」
「最後にのろけ食らっちゃったよーじゃあな」


祐希とこの人の関係は分からないけど今はそんなのどうでもいい

だって祐希が他人と付き合ってる

それだけが頭をぐるぐるする



じゃあ最初から祐希は俺なんてどうでも良かったんだ

マンガや知らない恋人の後ろに俺がいたわけで


それなのにこんな期待して、楽しみにして

本当ばかみたい


「可愛い」とか「大好き」とか「愛してるよ」とか

なんでもない言葉だったんだね

嬉しかったのに、なあ


これから祐希にどんな顔して会えばいいの?


「…ぁ」

雪が降ってくる

ホワイトクリスマス、なんて俺がこんな気持ちの時に限って

神様は意地悪だ


「あのぅー1人ですかぁ?」
「私たち今女子だけでクリスマスパーティーしててぇ」
「もし良かったら…」

三人組の女性に声をかけられる

いわゆる逆ナンってやつだろう

まあクリスマスにこんな1人でうろうろしてたら誘っていいように見えるよね


「すいません、そういうのは…」
「えー良いじゃん!」
「君高校生でしょ?お姉さんたちが色々教えてあげるー」
「ていうかかっこいいよねー」


あー…

なんかもういいや

祐希が彼女いるなら俺も遊んだっていいよね?

いつもなら絶対こういうの乗らないんだけど


「…じゃあ、少しだけなら」
「きゃー!やったぁ!」

腕を絡められながら飲み屋街に歩き出す

あーあ…
本当クリスマスに何やって…


「悠太!」
「………ぇ」


突然聞こえてきたのは脳で抑えてた人物の大好きな声

もう諦めてた人の声


「祐、希…?」
「何してんの!帰るよ。すいません、この人抜けます」
「えー!ちょっとぉ」
「ていうか君も…」
「悠太」


差し出された手を咄嗟にとる

力強く握られてそのまま俺は引っ張られた


家に帰るまで手は握ったままで、ずっと無言だった

というか祐希は手を離してくれなかった

そのまま部屋に入るとまず乱暴に抱きしめられる


「ちょ…祐希」
「ばか…こんな体冷やして!何してたの」
「…だって…帰りたくなかったから」
「っ…俺が悪かったから…もうやめてよ、そういうの…」
「…離して」
「やだ」
「離してってば」
「やだっ」


やめてよこんなの

俺知ってるんだから

祐希が浮気してんの
どうせその子にもこういうのしてるんでしょ

俺なんて…どうでもいいくせに


「…祐希なんて嫌い」
「!」
「もう…触んないで」
「…ごめん悠太、違うんだよ、今日のは…」
「俺なんてマンガ以下なくせに、浮気してるくせに…そんな優しくして、どういうつもりなの」
「浮気…?」
「悲しかったから…祐希が俺のことどうでもよく思ってるの知って」


俺はどん!と祐希を押しのけて背を向ける

祐希の顔を見ると泣きそうだから


「どうでもよくないよ…聞いて悠太」
「もういいよ、俺が勝手に浮かれてただけだから。俺が特別だって思い込んでてさ」
「悠太」
「ごめんね俺の気持ち押し付けて。祐希は別にそんなつもりなかったんだよね、俺が恋人とか勝手に期待して…」
「悠太!」


ぐいっと腕を引っ張られて俺の目に祐希が映る

それから色とりどりの花束が目に入って…


「……え?」
「メリークリスマス、悠太」
「な…に、これ」


祐希が俺の目の前に差し出したのは可愛らしいミニブーケ

黄色やピンクがイルミネーションよりキラキラして見えた


「クリスマスプレゼント、です」
「…あ…ありがとう」

受け取って花の匂いをすん、と嗅ぐ

いい香り…


「俺…花屋でバイトして、て」
「え…ファミレスじゃなかったの」
「うん。花屋」
「…そう」
「それ、で…本当は去年の約束覚えてたんだ」
「…ぇ」
「だから悠太へ花束つくろうかと思って…それで今日頑張ったんだけど…でも、上手くできなくて」
「……ふふ、それで」


ブーケはよく見るとちょっとくしゃっとしていた

形が悪くて不器用に結ばれたリボン

多分今日会った花屋の人はバイト仲間だろう

冷やかされながらこれを束ねたと思うとなんだか嬉しい


「でも悠太のプレゼント…綺麗にラッピングされてるから」
「…ああ、何もう見てたの」
「う…楽しみでつい」


俺は今年祐希へキャンドルを用意していた

クリスマスっぽく綺麗にラッピングされている物だった


「それで…なんか負けた気がして、っていうか恥ずかしくなっちゃって…あんな嘘、つきました」
「ふぅん」
「ふぅんって…」
「だって…もうどうでもいいんだもん」
「え…」
「嬉しいよ。ありがとう」
「……良かった」


祐希が俺のためにバイトして、俺のためにつくってくれたブーケ

不器用な嘘とリボンも付いてきたけど


それは多分、何より不器用な君の愛情


「悠太」
「ん?」
「そ、の…ごめん…」
「ううん、俺もごめんね」
「…とりあえず、メリークリスマス」
「メリークリスマス」
「悠太…大好き」
「…俺も」



不器用でもいい

聖なる夜はやっぱり君じゃなきゃだめみたいだ


これからだって君といつまでも



メリークリスマス



☆企画お誘いありがとうございました!よいクリスマスをお過ごしください

お題提供
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